AIワークショップ(ねこ検出器をtinyMLで作ろう)
50枚の猫の画像、50枚の犬の画像、50枚の部屋の画像を用いて Edge ImpulseクラウドでtinyMLのモデルを作り、OV7675カメラをつないだ低消費電力のマイコン(Arduino Nano 33 BLE Sense)にデプロイしてリアルタイム推論を実施します。
tinyMLをご存知でしょうか? 今非常にホットな話題として仮想通貨や自動運転などがありますが、tiny Machine Learningという分野がAIの分野でとても注目されはじめています。
安価なマイコンで機械学習(今は推論がメイン)を行う一連の取り組みがtinyMLです。モデルサイズは数kB〜と、普通の機械学習ではありえないほど小さいです。マイコンを使うメリットは、まず金銭コストがあります。安いので使い捨てや、そこらじゅうにばらまいたりするのも可能でしょう。次に消費電力です。1mW程度でも動くので、電池駆動で年単位で推論を行うデバイスを作ることも夢ではなくなります。あとは小型なので色々なモノに組み込める、さらには動いているプロセスが最小なのでシステムとして堅牢など、色々ありますね。
身近な例だと、「アレクサ」「Ok, google」や「Hey siri」はみんなtinyMLの推論によって実現されています。ご存知でしたか?
そこで今回、tinyMLのモデルをクラウドで作成し、マイコン(Arduino Nano 33 BLE Sense)にデプロイし、カメラを接続して画像認識を行う、という勉強会を企画しました。具体的には、50枚の猫の画像、50枚の犬の画像、50枚の部屋の画像を用いてクラウドでtinyMLのモデルを作り、マイコンにデプロイして推論を実行してみる、となります。
なお、当日は事前に郵送させていただくArduino Nano 33 BLE SenseとOV7675カメラを使用します。
ハンズオンは約40ページのテキストに沿ってすすめていただく形になります。
私自身、少し前まで音声系のAIスタートアップ企業に在籍し、AIプロジェクトに身を投じてきました。そこで日々感じていたのは、学習をクラウド上の強いマシンで行うのは理解できるが、推論をCPU/GPUパワーリッチな汎用的かつそこそこ値段のするエッジデバイスで行うということが、プロジェクトの性質によってはコスト的(金額および消費電力の両方)にいかに非現実的であるか、ということでした。
例えば異音検知を行う場合、学習のプロセスはマイク→オーディオケーブル→オーディオインターフェース→エッジデバイス→WiFi→クラウド→モデル作成、などとなります。一方推論のプロセスはクラウド→WiFi→エッジデバイスにモデルをデプロイ→マイクからの音声で推論、などとなるわけですが、マイク、ケーブル、オーディオインターフェース、エッジデバイスを何セットも用意すると、それだけで途方もない金額になり、さらに大量のデータをネットワークに流すコスト、クラウドでの学習のコスト、などを加味すると、ビジネスとして成り立つのか怪しくなる気がしていました。
そんな中、2020年の夏にEdge Impulseというアメリカのスタートアップが提供しているサービスを利用し、マイコン向けに小さな異音検知MLモデルをクラウドで作って数千円のマイコン(マイク付き)にデプロイしたことがありました。この時は人間のせきを検知させようと思ってやってみてうまく検出はできなかったのですが(以下の動画をご参照ください)、それでも大変な衝撃を受け、夜も眠れなくなりました。そこでEdge Impulseの使い方を日本語ドキュメントにまとめて社内に展開したところ、一部のAIリサーチャーからは同じように夜も眠れなくなったと言われました。
ST IoT Discovery Kit (STM32搭載マイコン)+Edge Impulseによるせき検出
動画はこちら
何がそんなに衝撃的だったかといえば、Edge Impulseのシステムが当時私が在籍していたスタートアップが構想&構築していた異音検知システムのクラウドサービスに酷似していたこともあるんですが、彼らは産業用PCや安価な例だとラズパイのようなものではなく、数千円、下手したら数百円のマイコン用に数kBのモデルをクラウドで作成してエッジにWiFi経由でデプロイする、そういうサービスをもう完成させていたことでした。
せめて推論は半導体マイク搭載の安いマイコンでできたらいいのになぁ。そう思っていたところに、プラットフォームサービスまで含めてもうやっているスタートアップがあった、それがEdge Impuseで、さすがシリコンバレーだなぁ、と感銘を受けたのでした。
IoTは儲からない、というのが世の中の常識になって久しいですが、これはIoTのデバイスがそもそも高いし、それらはただセンサーデータを垂れ流すだけで推論はしない、もし推論できても高すぎて話にならない、そんなところだと思います。しかしIoTデバイスがマイコンを搭載したものになって安価になり、さらにtinyMLによって推論までできる超低消費電力&小型のスマートIoTデバイス化したらどうでしょうか? 今とは景色が全く異なってくると思います。
お好きな日時で設定いただくことが可能です
時間 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
14:00 | Zoom接続確認 | |
14:10 - 14:15 | 自己紹介 | |
14:15 - 16:45 | ハンズオン | |
16:45 - 17:00 | 質問タイム |
2015年時点でインターネットにつながるIoTデバイス(モノ)の数は154億個で、5年後年までにその数は倍の304億個まで増えるとされていました。
このような中、個人レベルでも実際にIoTデバイスを作ったり使ったりすることを通じ、日本のIoTの活性化に貢献できればとの想いから、2017年6月にIoTラボを立ち上げました。
ご要望に応じて法人様への出張レクチャー・ハンズオンも可能です。
Steve
AWS認定ソリューションアーキテクト。米国の大学・大学院卒。博士課程での研究内容はFORTRANプログラムを使ったタンパク質X線構造解析。新卒で日本電子株式会社(JEOL、電子顕微鏡メーカー)入社後、電子顕微鏡や核磁気共鳴装置、質量分析計の販促、中国駐在、IT企画等を経験。その後まい泉創業者の小出千代子氏のもとで住み込みとんかつ修行、オーランドのフライトスクール、世界一周旅行、Javaプログラミングスクール、ピザベンチャー立ち上げ、SIerを経て株式会社安川電機入社。ITおよび新規事業企画(ベンチャー投資)を担当したのち、音声AIのHmcomm株式会社入社。2017年6月にIoTラボを、2018年6月に品川ハッカースペースを立ち上げ。趣味は海外旅行と家電ハック。
[email protected]
050-7128-6590